2020年への情熱/挑戦者たち(7)

 ◆会場への道 誰にも優しく バリアフリーマップ 紙やネット上に 異業種チーム作成中 《東京駅から東京国際フォーラムに車いすでスムーズに行ける道順は?》 《多目的トイレの場所は?》 今、こうした情報が分かる地図「バリアフリーマップ」を紙やネット上でつくる事業が進んでいる。 トヨタ、富士通、パナソニック、ゼンリン、セコム、電通、JTB……。2020年東京大会を盛り上げようと、15年に始まった「オリンピック・パラリンピック等経済界協議会」の参加企業の社員が集合。各社が費用を負担する形で、競技会場周辺のマップ作りを続けている。 まず、9月から国内12会場であるラグビーワールドカップ(W杯)用のマップを作り、そのノウハウを20年大会にいかす計画だ。 「『自分が車いすユーザーなら通れるだろうか』と考えながら情報を集めて下さい」 昨年11月、ラグビーW杯会場となるエコパスタジアム(静岡県)。NTT社員の永谷由作(ゆうさく)(34)が自治体職員や地元企業社員ら約40人に話した。 競技会場ごとにボランティアを募り、マップに載せる通路の幅、傾斜、段差、トイレの設備などの情報を集める。「ワーク」と呼ぶこの作業は、これまで各地で36回、延べ約1300人が参加した。永谷は、このうち25回ほどで説明役を務めた。 永谷が社内の20年大会関連部署に配属されたのは16年。職務でマップ作りに加わった。異動前は電子コミックスを扱う関連会社にいた。障害者との関わりは薄かったが、ブラインドサッカー日本代表の経験がある田中章仁(40)との出会いが「大きかった」という。 NTTクラルティ(東京都武蔵野市)に勤める田中にメールで活動への協力を頼むと、返信の早さに驚いた。読み上げソフトで着信メールを聞き取り、素早くキーボードを打つ姿は全盲と思えない。ブラインドサッカーの「見えているような」プレーぶりも驚きだったが、むしろ普段の関わりから気づくことが多かった。 例えば食事の時、料理の置き場所さえ教えれば、田中が困ることはない。永谷は「余計な気づかいが要らないのは、健常者同士の付き合いと同じだった」。田中も「障害の程度や種類は様々だから、接し方も様々。接する機会が増えれば、多くの人が理解できるはず」と話す。 マップに「ここは通れない」「このトイレ、使用不可」とは書かない。判断は人それぞれ。「障害者」とひとくくりにしないからだ。 経済界協議会は、マップ作製のために集めた情報をネット上で順次公開している。障害者や高齢者向けの様々なサービスに活用され、バリアフリーが社会に広がる展開を期待している。 将来、収益事業に結び付いていく道筋はまだ見えない。それでも永谷らは「20年大会のレガシー(遺産)になるはず」と口をそろえる。異業種の社員が知恵を出し合うスタイルが異例なら、同じ規格で各地のバリアフリーマップが並ぶのも例がない。 ワークでは、必ず「心のバリアフリー」にふれる。「街で困ってそうな人がいれば、『何か手伝いましょうか?』という一言を」。一歩踏み出す人が増えることこそ、一番のレガシーと思っている。 =敬称略 (岡雄一郎) 

2020年への情熱/挑戦者たち(7)

 ◆会場への道 誰にも優しく バリアフリーマップ 紙やネット上に 異業種チーム作成中 《東京駅から東京国際フォーラムに車いすでスムーズに行ける道順は?》 《多目的トイレの場所は?》 今、こうした情報が分かる地図「バリアフリーマップ」を紙やネット上でつくる事業が進んでいる。 トヨタ、富士通、パナソニック、ゼンリン、セコム、電通、JTB……。2020年東京大会を盛り上げようと、15年に始まった「オリンピック・パラリンピック等経済界協議会」の参加企業の社員が集合。各社が費用を負担する形で、競技会場周辺のマップ作りを続けている。 まず、9月から国内12会場であるラグビーワールドカップ(W杯)用のマップを作り、そのノウハウを20年大会にいかす計画だ。 「『自分が車いすユーザーなら通れるだろうか』と考えながら情報を集めて下さい」 昨年11月、ラグビーW杯会場となるエコパスタジアム(静岡県)。NTT社員の永谷由作(ゆうさく)(34)が自治体職員や地元企業社員ら約40人に話した。 競技会場ごとにボランティアを募り、マップに載せる通路の幅、傾斜、段差、トイレの設備などの情報を集める。「ワーク」と呼ぶこの作業は、これまで各地で36回、延べ約1300人が参加した。永谷は、このうち25回ほどで説明役を務めた。 永谷が社内の20年大会関連部署に配属されたのは16年。職務でマップ作りに加わった。異動前は電子コミックスを扱う関連会社にいた。障害者との関わりは薄かったが、ブラインドサッカー日本代表の経験がある田中章仁(40)との出会いが「大きかった」という。 NTTクラルティ(東京都武蔵野市)に勤める田中にメールで活動への協力を頼むと、返信の早さに驚いた。読み上げソフトで着信メールを聞き取り、素早くキーボードを打つ姿は全盲と思えない。ブラインドサッカーの「見えているような」プレーぶりも驚きだったが、むしろ普段の関わりから気づくことが多かった。 例えば食事の時、料理の置き場所さえ教えれば、田中が困ることはない。永谷は「余計な気づかいが要らないのは、健常者同士の付き合いと同じだった」。田中も「障害の程度や種類は様々だから、接し方も様々。接する機会が増えれば、多くの人が理解できるはず」と話す。 マップに「ここは通れない」「このトイレ、使用不可」とは書かない。判断は人それぞれ。「障害者」とひとくくりにしないからだ。 経済界協議会は、マップ作製のために集めた情報をネット上で順次公開している。障害者や高齢者向けの様々なサービスに活用され、バリアフリーが社会に広がる展開を期待している。 将来、収益事業に結び付いていく道筋はまだ見えない。それでも永谷らは「20年大会のレガシー(遺産)になるはず」と口をそろえる。異業種の社員が知恵を出し合うスタイルが異例なら、同じ規格で各地のバリアフリーマップが並ぶのも例がない。 ワークでは、必ず「心のバリアフリー」にふれる。「街で困ってそうな人がいれば、『何か手伝いましょうか?』という一言を」。一歩踏み出す人が増えることこそ、一番のレガシーと思っている。 =敬称略 (岡雄一郎) 

神奈川)相原高校クスノキ残して 市民が相模原市に要望

 2027年開業予定のリニア中央新幹線の新駅が相模原市緑区の橋本駅近くに設置されることに伴い、4月に移転する神奈川県立相原高校(同区橋本2丁目)。そのシンボルであるクスノキを残してほしいと、市民グループが保全などを求める要望書を市に提出した。署名活動や紙芝居の上演などもして訴えていくという。 橋本駅前にある同校の正門入り口そばに、高さ約15メートル、幹回り約5メートルのクスノキがそびえている。同校は1923年開校で、創立記念として植樹された。樹齢は約100年。学校の敷地内にあるが普段から住民らが脇を通り抜け、地域のシンボルツリーとして親しまれてきた。市はクスノキを保存樹木に指定している。 同校は県内で唯一、農業と商業を学べる専門高校。校内には牛舎や豚舎などがあり、約1千本150種の木など豊かな緑に囲まれている。だが、リニアの新駅設置で西に約1・5キロ離れた場所に移転。同校跡地周辺は再開発され、リニアの街に生まれ変わる。 同窓生や住民からクスノキを保…

栃木)受験直前、縁起物あれこれ 鉛筆、砂、マンホール

 受験シーズンたけなわ。日々蓄えた実力に加え、運を味方につけたい受験生や保護者は多いはず。最後の願掛けに訪れたい場所や、バッグやコートにそっとしのばせておきたいお守りを栃木県内で探した。 県庁北側にある宇都宮市塙田5丁目の蒲生神社は、江戸時代の儒学者で「学問の神様」とされる蒲生君平を祭る。年明け以降、県立高校の一般選抜入試がある3月初めにかけて、境内には君平の顔をあしらった絵馬が増える。 こちらでは金色に染められた「高校名入り合格鉛筆」が人気だ。県立61校のそれぞれの名前が刻まれていて、2本組で390円。禰宜(ねぎ)の葭田(よしだ)真彦さん(44)は「『サク(3・9)ラ、咲く(3・9)』の語呂に合わせました」と話す。 7年前に発売し、子や孫へのプ…

京都)年代もの鉄道古書ずらり 次世代につなぐ即売会

 鉄道関連の古書や資料をインターネットで販売する交通文化社(京都市中京区)が19日、左京区岡崎成勝寺町のみやこめっせで年1度の即売会を開く。並ぶのは約2千点、価格は100円から15万円まで。旧満州から東京までの乗り継ぎを記した戦中の時刻表や、昭和天皇が頻繁に利用した「お召し列車」の説明書といった年代ものも多い。 同社は2007年に設立された。鉄道の古書が専門で約2万冊を扱う。代表の星順也さん(45)はかつて佛教大大学院で鉄道史を研究していたが、文献が東京の古書店に集中していると痛感。「関西でも鉄道の古書を流通させたい」と思い立った。 「亡くなった父の蔵書を引き取ってほしい」「価値がわからないので捨てるに捨てられない」。鉄道ファンだった故人の家族から依頼を受け、古書を仕入れることが多い。故人にはお宝でも、家族に興味がなければ無用の長物。全国を回り、灰になりかねなかった希少資料を集め、次世代に残そうとしている。 即売会に並ぶ希少資料の一つが…

北海道)根室線東鹿越―新得間の早期復旧を 知事要望

 2016年夏の台風災害で不通が続いているJR根室線東鹿越―新得間について、道東や道北の首長代表が25日、札幌市の知事公館を訪れ、早期復旧を求める要望書を高橋はるみ知事に手渡した。 要望したのは、釧路町村会長の棚野孝夫・白糠町長や十勝町村会長の高橋正夫・本別町長ら、道東、道北の町村会長などを務める8町長。要望書は、同区間が道央と道東、道北を結ぶ重要な観光ルートだと指摘し、「利用促進策に取り組むうえで早期復旧が不可欠」と訴えている。 高橋町長は「沿線自治体もJR北海道に協力を惜しまないので、道庁も路線維持に力を貸してほしい」と要望した。 同区間は、JR北が「単独では…

変革者たち・7 人が人呼ぶ 持続可能な街

 3万3千人が暮らす町に、年間96万人が訪れる。紫波町の駅前にある「オガール」。10年近く放置されていた町有地は、公民連携(PPP)の手法で人気スポットに生まれ変わった。 図書館や地域交流センターといった公共施設のほか、子育て施設、産地直売所、カフェ、バレーボール専用の体育…

大阪)SNS活用して訓練も 阪神・淡路大震災24年

 阪神・淡路大震災から24年となった17日、府内各地でも大地震を想定した訓練が行われた。 大阪市も17日、大地震を想定した訓練を実施した。昨年6月に発生し、市内で死者も出た大阪北部地震の経験をもとに、吉村洋文市長が「災害モード宣言」。ツイッターなどで避難を呼びかけた。 市職員約4千人が参加した訓練では、午前8時半に大阪市内で震度6弱を記録する地震が発生。大津波警報が発令され、約110分後に市内に津波が到達する想定をした。 吉村市長は、動画で行政窓口の…

岐阜)「日本酒ブーム」で日韓交流 飛だの渡辺酒造店

 岐阜県飛驒市古川町の渡辺酒造店で20日、来日した韓国の飲食店関係者らが日本酒の製造過程を学び、杜氏(とうじ)らと交流した。韓国では日本ブームで日本酒の需要が伸びているという。両国の外交関係が冷え込む中、両者は「酒を通じて友情を深めたい」と話している。 酒造店の杜氏らが、来日した日本食レストランや居酒屋の経営者ら約15人を酒蔵に案内した。室温が約30度ある「麴室(こうじむろ)」で麴についての説明を受け、搾りたての純米大吟醸を試飲した参加者らの中には「搾りたての風味はここでしか味わえない」と説明を受けると、おかわりする人もいた。 韓国では日本ブームが続いていて、日本酒は高級な酒として、30~40代を中心に人気があるという。渡辺酒造店でも2年前に比べ、韓国への輸出量が倍増しているという。渡辺隆専務(44)は参加者らの印象を「日本酒についてとても勉強熱心。交流を通じて、もっと良い酒をつくろうという原動力になる」と話した。 自衛隊の哨戒機に韓国海軍が火…

落ちない巨岩に合格祈願 湖南市の三雲城跡

 ◆「お守り石」も販売 八丈岩 湖南市吉永にある中世の山城「三雲城」跡に、地面から浮き上がっているように見える「落ちそうで、落ちない岩」がある。合格を祈願する受験生にも人気で、地元吉永区の住民らは、訪れる受験生を後押ししようと昨年末から、「お守り石」の販売も始めた。 三雲城跡内にある「八丈岩」は、高さ、幅とも約10メートル、奥行き約3メートル。地面との接地面がわずかで、浮いているように見える。「落ちそうで、絶対落ちない岩なので、受験に御利益があるのでは」と、吉永区などは2015年から「合格祈願の岩」としてパンフレットを作製してPRを始めた。 区長の園部俊治さん(69)らが、手のひらサイズの平べったい小石を拾い集め、岩の近くに用意し、訪れた人が、絵馬のように願い事を書いて岩のそばに置けるようにした。旧東海道にハイキングで訪れた人たちの口コミで広まり、今では京都などから訪れる人もいるという。受験シーズンには、願い事を書いた石が、月に約100個積まれるという。 また昨年末から、「お守り石」(500円)も売り出した。手編みのお守り袋に、近くの神社で祈祷(き・とう)を受けた小石を入れている。お守り石はピンクや青など全5色で、計約100個作った。八丈岩近くの「青少年自然道場」(土日祝のみ開館で午前10時~午後4時)で取り扱っている。 園部さんは「絶対に落ちない八丈岩の姿を励みに、粘り強く合格に向けて頑張って欲しい」とエールを送る。「八丈岩からは市内を見渡せるし、ハイキングコースにもお薦め。気晴らしに訪れては」とも話した。問い合わせは園部さん(090・2701・8769)へ。(比嘉展玖)