静岡)湯河原町福浦のサンゴイソギンチャク群落

 「伊豆海道」の連載で初めて神奈川県を訪れた。とはいっても静岡県熱海市のお隣の湯河原町福浦。真鶴半島の南、沖には初島(熱海市)が見える。まさしく伊豆の海だ。漁協直営の行列ができる食堂前でダイビングサービス「タルカス」(080・4836・0833)代表の五十嵐一規さん(49)と待ち合わせた。 漁港の奥にあるダイビング用のスロープから海に入る。この海の見どころはサンゴイソギンチャクの群落だ。分布の北限域とされ、神奈川県の天然記念物に指定されている。先端が膨らんだ透きとおった触手が潮の流れに揺れる。ごつごつとした岩の隙間を埋めるように密生している。岩全体が一つのイソギンチャクのようにも見える。 黒、白、黄色のしま模様が目立つクマノミは伊豆の海の人気者。近づくと、さっとイソギンチャクの中に隠れる。威嚇するように向かってくるものもいる。真っ黒い体に白い星が浮き上がるミツボシクロスズメダイの幼魚やトゲチョウチョウウオの幼魚は、黒潮に乗って暖かい南の海からやって来る季節来遊魚だ。 五十嵐さんは2017年まで22年間、フィリピン・セブ島のダイビングスポット・リロアンでガイドを務めた。ダイバーの人気を集めカリスマ的な存在だった。古里の横浜に帰り、今は真鶴半島を中心にダイバーを案内している。「日本の海は常夏の海とは違う表情を見せる。四季があり、厳しい環境を生き抜く魚たちには強さを感じる」と身近な海を再評価する。(文・岡田和彦 写真・阿部秀樹氏)