北海道)甲子園での感謝の一礼に涙 北照高の彼に宛てて

 今夏の全国選手権大会に出場した北照高校の野球部に8月、1通の手紙が届いた。差出人は、東京都内の女性だ。甲子園での一つの出来事をきっかけに、選手と女性の手紙のやりとりが始まった。 手紙を出したのは東京都港区赤坂8丁目の宮能(みやの)奈美子さん(76)。8月17日付で、封書の裏に「高校野球を拝見して」と一筆が添えてあった。 宮能さんは同月6日、自宅でテレビ観戦し、北照の1回戦、九回表のシーンに胸が詰まった。 打球を追った岡崎翔太左翼手が両ふくらはぎのけいれんを起こし、甲子園の外野に倒れ込んだ。対戦相手の沖学園(南福岡)の選手がコップの水と冷却スプレーをもって駆けつけた。センターの源大輝選手が一礼すると観客から拍手が起きた。 宮能さんの便りには「お水を貰(もら)った沖学園の方に対しとっさに帽子を取り、爽やかな笑顔で一礼し感謝の意を表された御校の(源)選手の立派な態度に私は涙が止まりませんでした」と達筆で書かれていた。 さらに朝日新聞夕刊に掲載された、その瞬間をとらえた源選手の写真にも触れ、「彼の笑顔を眺めては改めて感心し元気をもらっている」と書き添えた。 この場面で、両チームの選手は一度全員がベンチに下がって水分補給。岡崎選手は治療を受け、グラウンドに戻り、試合は8分間の中断後に再開された。北照は、粘り及ばず2―4で惜敗した。 宮能さんの手紙は、野球部のミーティングで伝えられ、防水加工してグラウンドに張り出された。源、岡崎両選手のほか、三浦響主将と宮川恒美校長の4人が、礼状を書いて送った。 10月下旬、宮能さんから2通目が届いた。選手らの手紙に心打たれ、20人ほどの友人に、感動のお裾分けとして、手紙のコピーを送ったとあった。「この手紙は私の大切な一生の宝物」と結ばれていた。 その後に届いた便りには、小樽地区大会から甲子園での試合記録をまとめた記念誌のお礼が述べられ、「たくさんの可愛い孫が出来たように思われ、幸せなほっこりした気分になりました」とあった。選手の礼状を読んだ友人からの手紙も添えられていた。 源選手は「あの時は、水を持って走って来る沖学園の選手とベンチにお礼した。意識せずに自然に体が動いた」と振り返る。 宮川校長は「甲子園で観戦していたが、源君の一礼は宮能さんの手紙で初めて知った」と話した。 宮能さんは「水を持って駆けつけた選手、お礼をする選手。両チームのすがすがしいフェアプレー精神に感動した。家族友人が北照のファンになりました」と話した。(佐久間泰雄)