熊本)父が築いた土台を継ぐ 苦境生き抜いたイグサ農家

 熊本県八代市の広大な干拓地。吉田昭則さん(55)一家は、ここで150年ほど前から続くイグサ農家だ。今も妻小百合さん(51)、長男貴幸さん(30)と3人で、1・6ヘクタールの畑でイグサを育てる。 畳表を織って、畳店に納めるまでが、イグサ農家の仕事。明治時代から立つという自宅近くの作業小屋には、4台の織り機のリズミカルな音が響く。縦の糸は麻や綿。横の糸はイグサ。横糸を4本通すたびに、コンコンと間を詰める音がする。畳1枚分を織るのに約1時間。農繁期以外はのんびりとお茶を飲み、家族で談笑しながら機械の動きを見つめる。 全国の収穫量の9割以上を占めるイグサ産地だが、イグサ農家はすでに少数派。目に付くのはトマトなどのビニールハウスだ。「ここら辺は30年ほど前まで全部イグサ畑だった。『青いダイヤ』とまで呼ばれたイグサ農業の活気は、見る影もありません」と昭則さん。長男は家業を継ぐもの――。そんな常識は、とっくに過去のものとなり、茶の間でのだんらんや、住・職が近接する家族経営の姿は農村部でも珍しくなった。 そんな中、吉田さん一家はほぼ…